大西 嘉彦

打田地区
くわい、れんこん、原木椎茸、いちじく、漬物
昨年の秋の夕ぐれ、もうそろそろ稲刈が出来る時季かなと
田んぼを見回って、ふと異変を感じました。
約5m四方ほどの稲穂が倒されています。
そこに子供づれのイノシシが私と目が合い、
親イノシシがググッグとぶきみな声を出し、
私をにらみつけました。
動物の本能でしょう。子供のイノシシ四匹が親の後に
ひとかたまりになり、身を潜めました。
親イノシシは60kgぐらいあるかと思います。
あまりのするどさに私は一歩二歩と後ずさりました。
すると大丈夫と思ったのか、ググッと親イノシシの一声で
五匹の一家は一目散に山の中にと消えていきました。
最近報道でよく耳にします人間の世界は
親が子供に虐待死、死に追いやることを大変悲しく思います。
動物の親は自分の身を犠牲にしてでも
子供を守る気持ちをつくづく感じた夕ぐれでした。
そこで諺(ことわざ)を思い出しました。
「焼野のキギス 夜のツル」と、この訳おわかりでしょうか。
私は小学校二年生の時、終戦を迎えました。
それから二年ぐらい、食事も大変な時期でした。
それでも自分が食せずとも、子供にはひもじい思いをさせない様に
そだててくれた両親のことを思い出します。
どうか人の命の大切さを大事にしてほしいなと、
この年齢になりつくづく感じた秋の夕ぐれでした。
(2015年2月号 ふれあい新聞「生産者の声」より)